次に読みたい本は、重松清さん著の「その日のまえに」(株式会社文藝春秋、2005年8月10日初版)です。
本の帯に「最新連作短編集」とあるので、普通の短編集なのかと思って手に取った本でしたが、いい意味で期待を裏切られました。
この本は、以下の7つの短編で構成されています。
1.ひこうき雲
2.朝日のあたる家
3.潮騒
4.ヒア・カムズ・ザ・サン
5.その日のまえに
6.その日
7.その日のあとで
「ひこうき雲」は、クラスメイトの岩本さんにクラス全員でお手紙を書くために、クラスの一人ひとりに鉛筆が配られるところから始まります。
鉛筆を配っていることから、昭和の時代なんだなと推測しながら読み進めることになります。
「廊下にいちばん近い席の、前から二番目ーーぽつんと空いた席」という描写から、おそらく岩本さんは病気か何かで入院しているのだろうと読んでいくと、次に「早く良くなってください」「手術頑張れよ!」という言葉から、そうらしいことが分かる。
しかも岩本さんは、クラスメイトに慕われていた女の子ではなく、むしろ嫌われていたことも次第に明らかになってきます。
病気や手術、嫌われもののクラスメイトに励ましの手紙を書く。
静まり返った教室に、離陸して飛び立っていく飛行機の轟音が響く様子が、ありありと浮かんできます。
「離陸したばかりのボーイング747が見えた」とか「飛行機が、また飛んできた。今度は着陸の態勢だった。ルフトハンザ」などと妙にリアルな飛行機の描写があって、私はここは大阪空港に近い場所なんだろうと思いました。飛行機をリアルに書いているのは、岩本さんの病気がおそらくは、深刻な病気なんだろうと読者に思わせるためではないかと私は思いました。
そこには病室で動けない岩本さんと数百人の乗客を乗せて動いている飛行機、あるいは静と動、あるいは死と生といった対比を示しているのだろうと思うのです。
そしてこの「その日のまえに」という1冊の本は、それぞれが独立した短編を集めたものではなく、帯にあるように「連作短編」として、それぞれの短編=章が、それぞれ独立性を保ちながらも密接に絡み合って展開され、1つのストーリーを創っているのだとわかります。
「その日のまえに」の前にある4つの短編を読み進めるごとに「その日」の意味が分かってきます。そして7つめの物語「その日のあとで」のある1文で私は涙を流しました。
生きること、そして愛することがこれほどまでに崇高で尊いものであることが、この1文に集約されている氣がします。
重松清さんの著書は他にも読んでいるので、また別の機会にご紹介したいと思います。
「その日のまえに」は、重松清さんの本の中でも私的に格別にお勧めの1冊です。
ちょっと、仕事に疲れたな~とか、人間関係で嫌なことがあったとき、あるいは泣きたいことがあったときに読んでみてください。きっと「もう少し頑張ってみよう」と思うと思いますし、家族や友人、仕事仲間に対して優しい気持ちになれると思います。
この本を読んでみた感想など、お待ちしております。
では、また次の本のご紹介でお会いしましょう。


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