次に読みたい本がここにある20  「天地明察 上・下巻」

 今回ご紹介する本は、冲方丁さん著の「天地明察 上・下巻(角川文庫 平成24年5月21日 初版発行)です。

 2010年に本屋大賞も受賞し、岡田准一さんと宮﨑あおいさんのダブル主演で映画化もされているので、もしかしたら、ご存知の方も多いのかも知れません。お恥ずかしながら、私は2021年まで知りませんでした。

 それこそ、何か面白そうな本はないかと探していて、辿り着いたのがこの本でした。

 物語のテーマは日本の暦で、主人公は、渋川春海という実在の人物です。
 渋川春海は、江戸時代前期の寛永16年閏十一月三日生まれ(1639年12月27道)で、別名を安井算哲といいます。物語の中では、どちらの名前も使われています。

 当時、日本で使われていた暦は宣明暦せんみょうれきといい、平安時代の貞観じょうがん4年(862年)に中国(当時は唐の後期)から伝わったものでした。平安時代から800年以上も同じ暦が使われていたことを私は初めて知りました。

 余談ですが、宣明暦が日本に伝わった貞観時代は、災害の多かった時代としても知られています。貞観時代は、859年から877年までの18年間を指しますが、貞観6年には富士山や阿蘇山の噴火があり、貞観10年(868年)には播磨国地震が、翌11年には貞観自身とそれに伴う貞観津波が発生しています。

 この播磨国地震が、現代では阪神淡路大震災に、貞観地震と津波が東日本大震災とそれに伴う大津波になぞらえられています。そんな時代に唐からもたらされた暦が江戸時代まで使われていたことになります。

 平安時代から戦国時代を経て、江戸時代に入って平和を得た日本では、和算が盛んになりました。当時最も有名だったのが関孝和せきたかかずという算学者で、関は有機一族の藤原氏の出で、関を名乗っているのは養子に入ったためです。流石、日本の歴史において藤原氏の血流はすごいですね。

 さて、話を暦に戻しますが、和算が発展していく中で渋川春海は宣明暦が実際の天体運動と誤差があることに氣が付きます。月食や日食という、誰にでも分かり易い天体現象が暦と合っていなかったのです。そこで、晴海は当時の中国、元が採用していた授時暦じゅじれきへ暦を変えようと願い出ます。

 ところが、この授時暦でも日食とのズレが生じてしまうのです。

 晴海は、この原因を実際に天体観測をしながら追求し、遂にその原因に辿り着きます(ここは本のネタバレになるので、あえて割愛します)。これが日本初の国産暦である大和暦です。大和暦は朝廷に採用されて貞享暦じょうきょうれきとなります。

 天地明察は、これら渋川春海が国産の暦を創り上げるまでの道程を物語にしたものです。

 数学や天文の知識がなければ楽しめない本では決してなく、むしろ物語は渋川春海の生き様に小弟を当てた人間味溢れる物語となっています。

 現在、私たちが使っている暦の多くは「グレゴリオ暦」という暦で、1582年10月15日の金曜日から使われている暦で、エチオピア(ユリウス暦)、ネパール、イラン、アフガニスタンの4か国を除く、世界168か国が採用している暦ですが、この暦にはいろんな「不思議」と都市伝説があります。

 よく言われるのが、なぜ2月は28日までしかないのか、という疑問です。

 これは、カレンダーのルーツである古代ローマに原因があると言われています。
 いまでこそ、1年のはじまりは1月ですが、古代ローマでは農作業が始まる、いまでいう3月が1年のはじまりで、農作業が出来ない1月と2月は存在すらしていなかったのです。いまの暦で、9月をセプテンバー(September:7番目)、10月をオクトーバー(October:8番目)と呼ぶのは、3月から数えて7番目、8番目だった頃の名残とされています。因みに、オクトーバーの「オクト」は、8から「タコ」を連想したため、「オクトパス」がその語源とされているそうですが、本当のところは、みなさんでお確かめあれ。

 そんなこんなで、のちに暦が改訂されたときに「何もないというのも不味かろう」ということで、付け足されたのが1月と2月で、最後の2月は暦のズレを修正する調整月でしかなかったようです。

 現在の暦の基礎を作ったのが、ユリウス・シーザーで、彼は1年を365日と定め、奇数月を「31日(大の月)」、偶数月を「30日(小の月)」と交互に割り振りました。けれども、この計算で行くと、1年が366日になってしまいます。そこで、シーザーは1年の最後の月である2月から1日、削ってしまったのです。なんと不運な2月。

 次に暦を改訂したのは、初代ローマ皇帝アウグストゥスです。
 8月はオーガスト(August)と呼びますが、この語源になっているのがアウグストゥス(Augustus)とされています。

 実は、ユリウス・シーザーの誕生月は7月で、7月は31日までありました。
 ところが、ユリウスの暦では8月は30日しかありません(偶数月なので)。そこで「自分の誕生月が1日少ないのは以ての外である!」と、8月も31日にしたのです。

 すると、1日分、どっかから持ってこないといけません。
 もう、お氣づきですね。そう、2月から持って来たのです。シーザーとアウグストゥスがそれぞれ1日ずつを、もともと30日だった2月から持って来てしまったので、2月は28日になってしまったというのが、今に伝えられているお話です。

 でも、ここでもう一つ疑問が生まれませんか?
 当初は、奇数月が31日、偶数月が30日だったのですが、7月、8月を境に逆転しています。
 これは、アウグストゥスが8月を31日にしてしまったため、7月、8月、9月と31日の月、大の月が3ヵ月連続で続くことになってしまったので、9月を30日にして、そのまま10月は31日、11月は30日、12月は31日となった、といわれています。

 なんとも面白いですね。
 暦については、こんな感じですが、そもそもなぜ、1年が365日なのか。
 なぜ、1時間は60分で、1分は60秒なのか。なぜ、円は360度なのか。

 私たちの身の回りには、こうした「60」にまつわる数字が非常に多いのです。

 なぜか?

 その話は、いずれ何かの本の紹介とともに出来ればいいなと思っています。

 天地明察、是非、読んでみてくださいね。
 みなさんは、どんな感想を抱くでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました